聖女の曾孫
「ヴァクーニ様。お仕事ついでにお願いしてもよろしいかしら」
「ああ。なんだ」
「ミトリィ伯爵が復縁を迫ってくるんです。鬱陶しくて」
「ああ……あいつ、か」
ヴァクーニのただでさえ鋭利な瞳に、殺意が宿る。
ミトリィ伯爵サイート・ナトヴィー卿は、私の婚約者だった。
この男は聖女の家系である私と結婚し、一族を聖女の縁戚とする事が目的だった。いくら政略結婚が主流とはいえ、私でもなく母でもなく祖母でもなく大祖母でもなく、聖女というものへの憧れだけだったのだ。
大祖母は大祖父と愛しあい、結ばれた。
愛のない結婚では、魔界の扉の封印を保ち続ける活力が損なわれる。
愛こそすべて♪
「まだ諦めてないんだな」