春永すぎて何が悪い?
「玉手さんは今も付き合ってる人いるの?」
「うん。ずっと同じ人。」
「長いねー。」
信号が青になった。

並んで歩き出す。

「結婚しないの?」
「結婚ー、結婚ねー。」

10年も経つのに結婚が程遠い。

私がスタイリストになりたてだった頃、龍樹から「結婚どうする?」って言われた。

その頃は、龍樹もまだ独立してなくて、私は毎日に余裕がなかった。

「さすがに今はない。」

私は笑ってそう言った。

それ以来、一切「結婚」の2文字は出てこない。
失敗したと思った。

あの時結婚していて、子どもとか産んでいれば何か今とは変わってたのかもしれない。

「全然、結婚どころか今すでに迷走中って感じ。」

私は笑い飛ばすように自虐した。
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