春永すぎて何が悪い?
居酒屋の個室に通される。

龍樹以外の異性と2人で食事ってしたことないな。

久々に2人だけの空間に緊張してる自分に気付く。

でも及川くんはお構いなしにくつろぎはじめてメニューをゴソゴソを見始めた。

「なんか食べたいのある?」

そんなことを適当に言いながら。
私もやっと少し姿勢を崩した。

2軒目ということもあってすぐに酔いが回ってきた。

突然及川くんが枝豆をつまみながら、少し身を乗り出して楽しそうな顔をする。

「彼氏とどうなの。どんな感じなの、普段。」

他人の話を聞くのは楽しいんだろうな。

「んー、どうって・・・どうもないかな。」

及川くんが少し黙る。

静かな時間。
それぞれがお酒を飲む。

「迷走中ってさっき言ってたけど上手くいってないの。」

及川くんが少し声のトーンを落とす。

「んー・・・最近接点がないっていうか。」

カランと音がした。
グラスが氷だけになる。

「ふうん。」

及川くんがドリンクのメニューを私に差し出す。

「会話がないっていうか。」
「んー・・・」

及川くんからメニューを受け取る。

「甘え方も忘れちゃったし。セックスレスだし。」

その用語をすんなり出したことに自分でも驚く。
及川くんは「ふーん」と無表情でお酒を飲む。
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