春永すぎて何が悪い?
仕事が終わって店を出る頃には、及川くんは既に近くの中華料理の居酒屋に入っていた。

店名を確認して中に入ると、及川くんが私を見つけて手を振ってくれた。

「おつかれ。この間ありがとね。急なお願いして。」
「全然いいよ。おつかれ。」

私は荷物を隣の席に置いて座る。

生ビールで乾杯する。

及川くんは程よくリラックスしてて、落ち着いて話せる。

今まで全然話してこなかったことを不思議に思う。

「彼氏かっこいいじゃん。」

すぐに龍樹の話題をしてきた。

「龍樹?」
「龍樹。さすがイケメン。あの時はすごく仲良さそうに見えたけど。」

及川くんが料理を運んできた店員さんから料理を受け取る。

「あの時はね。」

そう言った後、ため息が溢れる。

あれ以来、またいつもの毎日。
触れるどころか、会話する暇もない。

何もない。

「なんか、多分、友達みたいになっちゃった。」

及川くんが料理を並べながら私をチラッと見たのが分かる。
けど私は及川くんを見ることなく続けた。

「全然、女として見てくれてない気がする。」

言いながら辛くなる。

「今でこうだったらさ、多分これ以上一緒にいてもダメだよね?」

やっと及川くんの目を見た。
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