春永すぎて何が悪い?
及川くんが優しい目をする。

「大丈夫?泣きそうになってるよ。」

目を伏せる。

及川くんが長い手を伸ばす。
そしてテーブル越しに頭をポンポンと撫でてくれた。

「甘えたかったら甘えたらいいじゃん。恋人ってそういうもんじゃない?」

穏やかな笑み。

「もし甘えてみてダメだったらさ、俺んとこおいでよ。」

すごく自然に流れ出てきたような言葉。
本気なのか冗談なのか読み取れない笑み。

及川くんは言葉に困ってる私を置いて、「いただきまーす」と料理に箸を伸ばす。

私を見た。
目が合う。

「とりあえず食べなよ。美味いよ。」

優しさが沁みる。

「うん。」

私はやっと箸を手にした。
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