春永すぎて何が悪い?
「他にも家具屋分かる?」

そう聞かれて、なんか嬉しくて路地裏の家具屋街を案内する。

小さい家具屋がチョコチョコ並んでいるところだ。

その並びを見ただけで「うおー」と嬉しそうな声を出す。

「めっちゃいいじゃん、ここらへん!」

気のせいか、鼻歌歌ってるように聴こえる。

たぶん頭でリズムを取ってるから、頭の中で音楽が流れてるんだ、この人。

龍樹さんはフラフラと気になった店から入っていく。

最初の雑貨屋さんの時の小さく萎縮してた時とは全然違う。

好きなものへはズンズン行けちゃう人。

店員さんに真剣な表情で話しかけてる姿を見て、また胸がときめいてしまう。

そういう顔もするんだ。

私はグリズリーでカレーを気持ちよく食べる姿しか知らなかった。

あっという間に時間が過ぎていく。

家具屋を何軒か見た後、龍樹さんは満足したような表情で「今日のところはこのくらいでいいかな。」と言った。

「今日のところは」ってことは、次回もありますか。

その問いは心の中に閉じ込めた。
< 39 / 61 >

この作品をシェア

pagetop