春永すぎて何が悪い?
「何もなくても女の子の部屋に上がったなんてバレたら、俺絶対フラれる。」

龍樹さんの情けなさそうな、でも奈穂さんへの愛情溢れる笑顔。

この人の、全部が好きだ。

やっぱり好きだ。

振られたけど、この人を好きで良かった。

そしてこんな龍樹さんにどこまでも好かれ続けてる奈穂さんが羨ましい。

結果は分かってたことだ。

「あ、そうだ。」と龍樹さんが手を叩く。

「今度グリズリーでりっちゃんカレー試食会しようよ。一人だといつもカレー余るでしょ。」

私と気まずくならないための配慮。
すごく優しい人。

龍樹さんは「じゃ、またね。」と言って、また私に背中を向けた。

私もマンションの中に入る。

顔も耳も全部熱いし、心臓がとんでもなく強く脈を打ってて、今にもぶっ倒れるんじゃないかと思うくらい。

でも私、頑張った。
腰抜けそう。

家にはかなり美味しいカレーがたくさんある。

たくさん食べよう。

そしてたくさん泣こう。
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