春永すぎて何が悪い?
そういうことだよな。

俺は他店舗のことまで全く把握してないけど、朝の様子から「大丈夫ですよ。」と答える。

「今朝、うちのシステムのタイムカード切られてます。」

アドリブで俺がそう答えると、龍樹は深く安堵の息を漏らす。

「よかったー。」

大の男がヘタヘタと階段に座り込んだ。

「大丈夫ですか。」
「ちょっと、昨日の夜から奈穂ちゃん消えちゃってて。でも安否確認できたんで、大丈夫です。」

龍樹はそう言って笑顔を見せて立ち上がる。

「忙しいところすみません。ありがとうございました。」

そう言って彼は俺に背中を向けてフラフラと階段を上がっていく。

「あの」

思わずその背中を呼び止める。

「気にならないんですか。」
「え?」

龍樹が振り返る。

「どこで何してたのか、とか。」

墓穴掘り過ぎだ。
龍樹は一瞬真顔になったけど、すぐに笑った。

「奈穂ちゃんのことは信じてるんで、帰ってくるの待ちます。」

返答もイケメンで俺は言葉を失う。

いい男過ぎるんだよ。

光が差し込む中、俺はただそのかっこいい背中を見送った。

龍樹のこの気持ちを玉手さんが知ったら、敗北だろう。
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