春永すぎて何が悪い?
本心
仕事終わり。
個室居酒屋で待っていたら、玉手さんが現れた。
「おつかれー。」
「おつかれ。」
いつもの調子で生ビールで乾杯する。
今日、龍樹が俺の店に来た。
そのことを言ってしまったら、絶対に俺の可能性が絶たれる。
俺は、まるで何もないように飲み進めた。
心なしか今日は玉手さんの飲むペースが早い。
言葉数は少なめに、ひたすら飲んでる。
「飲むね。」
昨日のこと、後悔してんのかな。
龍樹とうまくいかないこと、やっぱ辛いままなのかな。
俺はただ玉手さんの飲み進める姿を見つめていた。
「及川くん」
突然、玉手さんが真剣な顔で切り出す。
「なに。」
何を言われてもポーカーフェイスで済ませようと思う。
全然大丈夫だよ、またただの同期に戻ろうって言えばいいんだし。
「今度、今度ちゃんと龍樹と話すね。」
玉手さんが言ったのはそんなことだった。
「話すって、別れ話?」
玉手さんが首を横に振る。