春永すぎて何が悪い?
「龍樹の今の気持ちが知りたい。龍樹もまだ好きでいてくれてるのか確かめたい。」

そう聞いて、俺の失恋が半ば確定した。
俺は龍樹の気持ちを知っている。

「そうじゃないと、10年間好きだった人を諦め切れない。」

そう苦々しく笑う玉手さんの顔は、まだまだ龍樹のことが好きで仕方ない顔だった。

「うん、分かった。」

昨日の返事のつもりなんだと思う。

俺は視線を自分の足に落とす。

「それでね、私やっぱり、龍樹に会いたい。」

たぶん、申し訳ない気持ちになってるんだと思う。
龍樹にも俺にも。

玉手さんがボロボロ泣き始めた。

俺はただ頭を撫でることしかできない。

失恋。
まあまあ痛い。
つらい。

玉手さんは小さく泣きながら「龍樹のところに帰りたい。」と言う。

まるで子どもみたいだ。

「じゃあ、今帰る?」

そう聞くと、コクンと頷いた。

俺たちは店を出た。
< 51 / 61 >

この作品をシェア

pagetop