春永すぎて何が悪い?
好きの夜
龍樹が少し雑に私の服を脱がせてくれる。

「これ?これでいい?」

そう言ってタンスの中から着古したパジャマがわりのTシャツとジャージを持ってきた。

「うん。」

龍樹が私にそれらを着させてくれる。

面倒くさい女って思ってんだろうな。
ごめんね、こんな女で。

さっきから龍樹は数え切れないくらい「もー」を繰り返す。

「気持ち悪くない?吐きそう?」
「大丈夫。」
「昨日どこ泊まったの。」
「ないしょ。」

私はそう答えて、そして酔った勢いに任せて目の前の龍樹の首元にギュッと抱きつく。

「ねえ、龍樹。」

今は酔っ払ってるからいいよね?

酔っ払いの言葉だと思って聞き流してね。

龍樹が私に抱きしめられながら「ん?」と言う。

「なんでもう最近キスしてくれないの?」

腕の中の龍樹が黙りこむ。

「もう私のこと好きじゃなくなっちゃったの?」
「奈穂ちゃん。変わっちゃったのは奈穂ちゃんの方じゃない?」

龍樹が私の腕を解いて、前髪を分けて私の顔を抑えてしっかり見つめる。

「俺は何も変わってないよ。」

私の目から涙が溢れる。
なんの涙なんだろう。
制御できないのはなんでなんだろう。

きっとお酒を飲んだからだ。
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