春永すぎて何が悪い?
「じゃあなんで最近エッチもキスもないの?」
「奈穂ちゃん、俺だって聞きたいよ。」

龍樹が笑う。
胸が痛い。

「でも奈穂ちゃんのことはずっと好きなままだよ。ずっとずっと一緒にいたいよ。」

龍樹が私の絡まった髪を解くように頭を撫でてくれる。
久しぶりだ。
この距離で龍樹の顔見るの。

「じゃあ今キスして。」

「うん、いいよ。」

「早くしてよ、今。」

龍樹が私の後頭部に手を回して、次の瞬間グイと強く引いた。

いつぶりか分からないほど久しぶりに、龍樹をかっこいいと思った。

久しぶり過ぎて緊張する。

少し唇が近付いてフワッと離れた。

「え?した?」
「したよ。」
「分かんないよ。」
「分かってよ。」

龍樹が照れ臭そうに笑いながら、今度は姿勢を正してちゃんと真正面に座る。

またゆっくり近づいてくる。
こんな風にドキドキするキスは多分10年ぶり。

今度はちゃんとした。

ちゃんと、しっかり。

時間が止まったみたい。

ねえ、龍樹もドキドキしてる?

私、27歳にしてすごくドキドキしてるよ。

付き合って10年も経つのに、すごくドキドキしてるよ。

さっきまでの酔いから目覚めるくらい、緊張してるよ。

漫画の中の主人公みたいな気分だよ。

上手くないし、淡白だけど、やっぱり龍樹とのキスが一番好き。
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