トライアングル 上
「確かにあの時の祐介は強かった。」
亮輔がサーブラインに立ち、
「バドミントンを選んだのは祐介の勝利への確信からだろう。」
静かにシャトルを胸の高さから空に落とし、手首を返すようにシャトルを打った。
「俺だって、あれからバドミントンをしなかった訳じゃない!」
トーンとシャトルがガットに当たった高い音が体育館中響き渡る。
亮輔の打った打球は低い軌道でギリギリネットの上を通過。
祐介のサーブラインのギリギリ右端、コートから出るか出ないかの位置に向け落下する。
「フン!」
低く祐介のコートの手前の方にドロップぎみで落ちる打球を力まかせに掬い上げるように亮輔がサーブしてきた方とは対角へ打ち上げる。
祐介の力のこもった打球は少し高く上がり、コートを横断するかのように亮輔のコートの右、"円"で言えば左の四角の中央あたりまで伸びる。
その高い打球をスマッシュぎみで押し出すように力強く返す亮輔。
亮輔の打球は祐介のコートの左奥、角ギリギリ目掛けて落下する。しかし、亮輔が打つと同時にコートの後方へ下がっていた祐介。バックハンドで窮屈そうに、亮輔背を向けながら、オーバーヘッドで腕を振り切る。
トーン!
ガットに当たったシャトルは大きな軌道は描くも、
バックハンドで力がこもらず亮輔のコートの"円"
の跳ねてる足あたりで、失速。
そこにまるでわかっていたかのようにネット際まで走り込んでいた亮輔がチョンと軽く触る程度にシャトルを祐介のコートの右手前に落とした。
"ロブ&カット"
相手のコートの深い位置に打球を打ち込み、打ち返させた
球をコートの浅い位置に落とす方法。
「亮輔選手1ポイント〜〜!!」
女神が高らかにスコアボードをめくり、
初ポイントを祝う。
「よし!」
亮輔が小さくガッツポーズをする。
亮輔にとってこの1点は大きかった。
まず、過去の払拭。
負けの映像が染み付いていた心に
自分は祐介と戦えるという自信をつけさせれる。
それともう一つ。
プライドを捨ててまで先制を貰ったこと。
それほど亮輔はこの戦いでの勝ちが欲しかった。
この1点はその第1歩としては大きいと言える。
「、、、。」
コートに転がるシャトルを静かに取り、無言で女神に渡す祐介。
ポキポキと首を鳴らしながらサービスコートに再び腰を低くかがめ
その眼光は鋭く、亮輔を睨みつけたまま次のサーブを待つ。
両者無言での攻防。
女神も両者のただならぬ雰囲気に押黙る。
今までにない緊張感で体育館中の空気が静かに張り詰める。
「さて、次は、、、。」
女神からシャトルを受け取ると亮輔は次の作戦を考えていた。
睨みつけている祐介の眼光をよそに、相手コートを右往左往目で往復し、イメージを固める。
「、、、よし!」心で決意を固めサーブを今度は下から掬い上げるように打った。
亮輔の高く上がったサーブはサービスコートの奥深くに狙いを定めて落下する。
その打球の行方の真下に素早く回り込んだ祐介が
身体全体を使って、
「フン!」
腕を思い切り振り打ち返す。
ブン!という風斬り音と共にトーン!とコルクの音が響き渡る。
祐介の打球はコートを真っ直ぐ縦断するように亮輔のコートのサーブを打った反対の"円"の右端に向け、低い弧を描き、勢いよく飛んでいく。
そこへ狙いを澄ましたかのように背中を見せながら
バックハンドで回り込む亮輔。
「よっ!」
落ちてきた打球を切るように打ち返す。
祐介の<ネット際、左足元に落ちて来た球。
「おっと」と言うように前のめりになりながらネット際に
落ちる球を掬い上げる祐介。
打った打球はとっさに、相手が打ってきた逆方向へ打ち返していた。
体制を崩しながらも飛ぶ打球を目で追う。
しかし、打球の先にはすでに亮輔の姿。
「、、、計算通り!」
思い切り振りかぶり、
ふんわりとドロップ気味に上がった祐介の打球を
ネット際まで攻めて来ていた亮輔が
真っ直ぐ腕を伸ばし
打球が弧の頂点に達するが否や
祐介が居ない空いたスペースへ向け、
スマッシュ!
「フン!」
祐介が思い切り腕を伸ばすも届かず。
「亮輔選手2ポイント〜〜!」
女神が亮輔のポイントをもう一枚めくる。
亮輔がクールに微笑む。
「バドミントンの勝ち方の基本1、『オープンスペースを作る事』。」
振り返ると、
1ポイント目、、、①サーブでコートの手前に
落とし、
祐介に掬い上げさせる。
②祐介が掬い上げた球を今度
は祐介の
逆方向に大きく上げる。
③"円"の左上に走らせた祐介
のコートの
右下にはオープンスペース
が出来る。
2ポイント目、、、①サーブを今度は祐介の奥
に打ち上げる。
②祐介の打ち返して来た球を
ネット際に返す。
③祐介をネット際に誘い出す
事でコート
の奥にはオープンスペース
が出来る。
「オープンスペースを作ってそこに落とす。」
女神からシャトルを受け渡された亮輔がシャトルを見つめながらサービスコートへ移動する。
「<相手を動かして何手先まで読むか。今の俺ならそれが出来る!」
祐介相手に2ポイント先取。
それは祐介相手に戦えるという自身に繋がる。
しかし、今回は油断はしない。
相手が祐介だけに何が起こるか分からない。
それだけにこのまま押し切って、
欲しい。
祐介の土俵で自分が勝てる事の証明。
祐介のコートを見つめながら次の勝利の動線を思い描く。
その間も祐介は低い姿勢で、首をポキポキ鳴らしながら無言で構えている。
亮輔がサーブラインに立ち、
「バドミントンを選んだのは祐介の勝利への確信からだろう。」
静かにシャトルを胸の高さから空に落とし、手首を返すようにシャトルを打った。
「俺だって、あれからバドミントンをしなかった訳じゃない!」
トーンとシャトルがガットに当たった高い音が体育館中響き渡る。
亮輔の打った打球は低い軌道でギリギリネットの上を通過。
祐介のサーブラインのギリギリ右端、コートから出るか出ないかの位置に向け落下する。
「フン!」
低く祐介のコートの手前の方にドロップぎみで落ちる打球を力まかせに掬い上げるように亮輔がサーブしてきた方とは対角へ打ち上げる。
祐介の力のこもった打球は少し高く上がり、コートを横断するかのように亮輔のコートの右、"円"で言えば左の四角の中央あたりまで伸びる。
その高い打球をスマッシュぎみで押し出すように力強く返す亮輔。
亮輔の打球は祐介のコートの左奥、角ギリギリ目掛けて落下する。しかし、亮輔が打つと同時にコートの後方へ下がっていた祐介。バックハンドで窮屈そうに、亮輔背を向けながら、オーバーヘッドで腕を振り切る。
トーン!
ガットに当たったシャトルは大きな軌道は描くも、
バックハンドで力がこもらず亮輔のコートの"円"
の跳ねてる足あたりで、失速。
そこにまるでわかっていたかのようにネット際まで走り込んでいた亮輔がチョンと軽く触る程度にシャトルを祐介のコートの右手前に落とした。
"ロブ&カット"
相手のコートの深い位置に打球を打ち込み、打ち返させた
球をコートの浅い位置に落とす方法。
「亮輔選手1ポイント〜〜!!」
女神が高らかにスコアボードをめくり、
初ポイントを祝う。
「よし!」
亮輔が小さくガッツポーズをする。
亮輔にとってこの1点は大きかった。
まず、過去の払拭。
負けの映像が染み付いていた心に
自分は祐介と戦えるという自信をつけさせれる。
それともう一つ。
プライドを捨ててまで先制を貰ったこと。
それほど亮輔はこの戦いでの勝ちが欲しかった。
この1点はその第1歩としては大きいと言える。
「、、、。」
コートに転がるシャトルを静かに取り、無言で女神に渡す祐介。
ポキポキと首を鳴らしながらサービスコートに再び腰を低くかがめ
その眼光は鋭く、亮輔を睨みつけたまま次のサーブを待つ。
両者無言での攻防。
女神も両者のただならぬ雰囲気に押黙る。
今までにない緊張感で体育館中の空気が静かに張り詰める。
「さて、次は、、、。」
女神からシャトルを受け取ると亮輔は次の作戦を考えていた。
睨みつけている祐介の眼光をよそに、相手コートを右往左往目で往復し、イメージを固める。
「、、、よし!」心で決意を固めサーブを今度は下から掬い上げるように打った。
亮輔の高く上がったサーブはサービスコートの奥深くに狙いを定めて落下する。
その打球の行方の真下に素早く回り込んだ祐介が
身体全体を使って、
「フン!」
腕を思い切り振り打ち返す。
ブン!という風斬り音と共にトーン!とコルクの音が響き渡る。
祐介の打球はコートを真っ直ぐ縦断するように亮輔のコートのサーブを打った反対の"円"の右端に向け、低い弧を描き、勢いよく飛んでいく。
そこへ狙いを澄ましたかのように背中を見せながら
バックハンドで回り込む亮輔。
「よっ!」
落ちてきた打球を切るように打ち返す。
祐介の<ネット際、左足元に落ちて来た球。
「おっと」と言うように前のめりになりながらネット際に
落ちる球を掬い上げる祐介。
打った打球はとっさに、相手が打ってきた逆方向へ打ち返していた。
体制を崩しながらも飛ぶ打球を目で追う。
しかし、打球の先にはすでに亮輔の姿。
「、、、計算通り!」
思い切り振りかぶり、
ふんわりとドロップ気味に上がった祐介の打球を
ネット際まで攻めて来ていた亮輔が
真っ直ぐ腕を伸ばし
打球が弧の頂点に達するが否や
祐介が居ない空いたスペースへ向け、
スマッシュ!
「フン!」
祐介が思い切り腕を伸ばすも届かず。
「亮輔選手2ポイント〜〜!」
女神が亮輔のポイントをもう一枚めくる。
亮輔がクールに微笑む。
「バドミントンの勝ち方の基本1、『オープンスペースを作る事』。」
振り返ると、
1ポイント目、、、①サーブでコートの手前に
落とし、
祐介に掬い上げさせる。
②祐介が掬い上げた球を今度
は祐介の
逆方向に大きく上げる。
③"円"の左上に走らせた祐介
のコートの
右下にはオープンスペース
が出来る。
2ポイント目、、、①サーブを今度は祐介の奥
に打ち上げる。
②祐介の打ち返して来た球を
ネット際に返す。
③祐介をネット際に誘い出す
事でコート
の奥にはオープンスペース
が出来る。
「オープンスペースを作ってそこに落とす。」
女神からシャトルを受け渡された亮輔がシャトルを見つめながらサービスコートへ移動する。
「<相手を動かして何手先まで読むか。今の俺ならそれが出来る!」
祐介相手に2ポイント先取。
それは祐介相手に戦えるという自身に繋がる。
しかし、今回は油断はしない。
相手が祐介だけに何が起こるか分からない。
それだけにこのまま押し切って、
欲しい。
祐介の土俵で自分が勝てる事の証明。
祐介のコートを見つめながら次の勝利の動線を思い描く。
その間も祐介は低い姿勢で、首をポキポキ鳴らしながら無言で構えている。