トライアングル 上
そして話は戻る、、、
今にも降り出しそうな生憎の天気。
分厚い雲の中でゴロゴロ雷鳴が轟いている。
そんなグラウンドの中央、ピリピリした雰囲気で睨み合う
亮輔と祐介。
「祐介!てめ〜4番バッターになってから調子こいてんじゃね〜ぞ!打率3割のくせによ〜!」
くっつきそうな位頭を近づけて啖呵をきる亮輔。
「おめ〜こそ、エースピッチャーや言われとるけど
この前の試合2失点もしやがって!わしが点とっとらな
負けとるところじゃーホンマ頼りないの〜!」
ポケットに手を入れながらバカにするように睨みつける祐介。
「なんだと!!」
胸ぐらを掴み亮輔が拳を握り、振り上げた!
その瞬間!
「ピカッ!」
辺りを包む眩しい光で2人の目の前は真っ白になった。
それまでの罵声で騒がしかったグラウンドが一気に静まり返る。
全てが停止したような静寂。
そんな静寂のなか、聞き覚えのない透き通った女性の声。
「迷える子羊たちよ!目を開けなさい!」
「え!?」
2人は同時にそ〜っと目を開ける。
すると、少し見上げた上空、
校舎の二階位の高さに居なかったはずの女性の姿。
右の拳を振り上げたまま固まる2人。
綺麗な青のドレス、大きな青い瞳、金髪で透き通るような白い肌。
童話にでも出てくるような絵にも描いたような美しい女性。
現実離れしたその姿に釘付けになる。
「妾は戦いの女神。そなたたちの戦いを見ていました。」
その美しい声はまるで直接脳に響き渡っているかのように鮮明に聞こえた。
現実か幻か、、、。
状況を掴めないまま女神の言葉を理解しようと考えを巡らす2人。
そんな状況下、ふと横の相手の事が気になる。
『今自分はどんな顔をしている?』『困惑している姿を晒したくない』『相手に弱みを見せたら負けだ!』
グチャグチャな頭を抱えながら必死に平静を装う。
そんな気持ちを察したかのように女神が言葉をかける。
「お互いが負けたくない争い。このままいがみ合った所で何も解決しないでしょう。そんなそなた達の争いに白黒つける為に妾が力を貸しましょう。」
『力?どういう事だ?』怪しげな言葉に亮介が疑問と不安を抱えていると、我先に、と勝ち気な祐介が言葉を発した。
「どういう事か分からんけど、こいつを負かせるんやったら女神とでも、死神とでも何でも契約したるわ!」
掴まれていた胸ぐらの手を振り払い、再び亮輔を突っぱね
女神に「よこせ!」と言わんばかりに左の掌を付き向ける。
先を越されたと、焦るようにすぐさま亮輔も負けじと裕介の行動を鼻で笑い、強気に女神に問いかける。
「フンッ!バカじゃね〜の!そんな危ない橋渡れるか!
まずは力とやらを説明して貰おうか。」
女神は少し笑みを浮かべ、諭すかのような優しい口調で答える。
「力と言っても争うのはあくまでそなた達です。妾が与えるのは事象。"場所"、"物"、"事柄"。そなた達が思う存分争える環境を作る事。そなた達の思い通りの状況を提供しましょう。」
亮輔は腕をL字に組み、握った掌からは人差し指と中指を出し、額をコンコンさせながら言葉の意味を探る。
「じゃあ例えばこいつと今学校にない"ビリヤード"で対決したいと思えば、部屋から道具から全部用意してくれると?」
「そう。ただし条件が2つあります。1つは次の競技は前の競技から連想出来るものに限らせて頂きます。例えば"ビリヤード"なら、"テーブル"、"球"、"突く"などから"卓球"、"バレー"、"フェンシング"といったように。もう1つは連想は交互に行う事。」
そんな女神と亮輔のやり取りに付いて行けず付き向けていた左の掌を弱々しく下げる裕介。
これを見逃さなかったのは亮輔。
すぐさま自分の勝ちへの方程式を作り上げる。
「オッケー!じゃあ俺から言うぞ!