トライアングル 上
【第7章】 悪夢
グラウンドから土手を上り、南館と北館の真ん中を
渡り廊下が繋ぐ"H型"をした校舎。
その南館と北館のの間に球は飛んでいった。
その記憶をもとに南館の校舎の角まで差し掛かる。
「〜〜〜!!」
「、、、お二人とも!!」
そこへ空を先に状況を確認しに飛んで行った女神が
慌てた様子で戻ってくる。
「梨緒さんが、、、、梨緒さんが、、、、!」
その慌てように、只事ではない!梨緒に何かあったんだ!と
女神に導かれるように2人は校舎の角を曲がる。
そんな2人の目に飛び込んで来たのは想像もしない光景だった。
校舎と校舎の間。
そこにはちょうど"木工教室"がある。
その横に出現した不自然に無造作に積み上げられた木材の山。
たしかここには授業で使うはずの高く積み上げられた大きな木材があったはず。
普段はロープなどで強く固定してあるはずの木材が
全て崩れ、倒れ込んでいる。
状況がすぐには理解できず唖然とする2人。
そして気付く。
巨木の間から
不釣り合いな細く白いマネキンのような腕だけが
助けを求めるように突き出ている事に。
『梨緒さんが、、、!』女神の言葉を思い出す。
そして聞き覚えのある声「2人ともやめなさ〜い」
「まさか!!?」
2人の考えが1つにまとまる。
「、、、梨緒!!」
声を上げ、まず行動したのは祐介。
木材の山に駆け寄ると白い腕の真上に乗っかっている木材を持ち上げようとする。
「おら〜〜〜!」
力いっぱい持ち上げるも、腕以外確認が取れないほど
山積みに木材が重なり、1つ1つがかなり重い。
顔を赤くしながら足をM字に曲げ、
フォークリフトのように腕と身体全体を使い、
持ち上げる。
「む〜〜〜!!」
しかし全くびくともしない。
顔を赤くしながら何度も何度も木材を持ち上げる事を繰り返す祐介。
亮輔はその状況に混乱し未だ何も出来ずにいた。
「、、、何でこうなった、、、」
「、、、何で梨緒が下敷きに、、、」
校舎に向かって飛んでいった球、、、。
その直後に聞こえた叫び声、、、。
積み上がった木材、、、助けを求める腕、、、。
「何でこんな事に、、、!?」
考えたくもない答えが亮輔の頭の中で結び付く。
「この大量な木材の下には梨緒がいるのか!?」
「球が飛んできたせいで、、、」
真っ赤な顔面で木材を持ち上げ続ける祐介とは裏腹に
状況を理解するほど顔面が蒼白していく亮輔。
木材の下からはジワリと赤い血が滲み出てくる。
それを見ると、
「梨緒!!」
亮輔も現実に戻り、祐介に加勢するように別の木材のを持ち上げ出す。
「ん〜〜〜!!」
亮輔も顔を赤くし必死で木材を持つ。
やっとの思いで最上部の木材を1つ避ける事に成功した。
「梨緒!梨緒!」
必死に呼び掛け続ける。
「うおおおお!」
祐介の持ち上げていた梨緒の上の大きな木材が
亮輔が脇の木材を1本取った事で少し持ち上がる。
その直後。
見えていた腕がスッと消えた。
「何でじゃ!?」
木材が持ち上がり、梨緒救出の兆しが見えた矢先の事で
祐介が驚き木材を持ち上げたまま固まる。
「!?」
その異変に亮輔も気付く。
謎の現象の答えはすぐに出る。
「梨緒さんは私が搬送できる病院へ転送しておきます。
あとは任せて下さい。」
気付くと梨緒と共に姿を消していた女神の声だけが
校舎中に響き渡る。
この状況を見かねた女神が梨緒を病院まで飛ばしてくれたんだ、、、。
ガタン!
安心感で持ち上げていて木材を思い切り放す祐介。
亮輔も少し肩の力が抜けて
今、目の前でいきなり起きた事が整理が出来ず
処理落ちしたように
ただ立ちすくむ。
今のは夢だったのか、、、?
しかし、残ったのは大量の木材と
その下に滲む
赤い血。