群青、蓮
 青い雲は、流れ行く蓮にも似ていた。きいえ、そう、言った。その女郎花群青、美しい瞳だった。
 男の名はアン、美しい黒髪だった。国は浄安、エデンでの事だ。

 一羽の蝶に焦がれ群青を殺した男アンの話。忘れられないと天人は言った。余りにも刹那い拙い愛だった。
 群青色の揚羽。天人花、かんばぜるアンの花の瞳は天人界随一。泣いて、唇を、噛んだと言う。
 同じエデンでも、国が違った。群青はクニタチ、アンは海の向こうだ。
 どう逢瀬た。
 何と、飛び回っていたら逢えた。信じられない程感じたわと互いは言い合った。
 忘れられないね。舟での逢瀬の程も宜しく。
 海の上だって良かった。溺れる事なく、歓喜の国にだって行けた。
 それは美しい園で、小さなエデンだと思えた。笑った。
 天人がわんさかいて祝い事をしていて死ななかった。何年だって天人ならいられた。信じられない程の神世代に溺れた。死のう?やーだね。
 二人は結ばれた。何年も会いたいと思って泣いた。
 結ばれなかった人生もあった。死んだら逢えて、手を繋いで与えられた家に行った。二人は、消えようかと言った。
 コミタマで、余りにもの美貌では無い二人は消えたら最大美だとの嘘を信じた。消えたらサイゴね。笑う顔ー。
 ニコニコして、可愛いねー、二人はそう風に言われて頬を染めた。
 そう、昔は、風やら花やらになりたい言うたね。叶わなかったね。只の町人だね僕ら。美しくも無いね。泣こう、今日は、泣こう。 明日、一日で滅ぶ菩提を与えてもらお。
 音楽が、聴こえた。それは哀しげだった。生きて、貴女は蝶より美しいわ。そう天人に言われた。
 分かるか!風を引っ掻いて遣ろうかと嘘吹いた。群青揚羽になった貴女を、僕は殺したいと悟った。
 涙は七色ですか。そうですか。いいを憎んだ。
 泣いて、サイゴにしよと二人は海の上を走った。
 溺れる事も無く走り入り、アンの母国にまで行けた。
そこで記憶は途切れた。聖王に粗相の通達が行った。
 二人の記憶は、そこ迄で無い。二人は結ばれ、群青は揚羽となりアンはそれを喰った罪に問われた。
 聖王は溜息を吐いて、下らない事で揉めないで欲しいわあ。そう、言ったと言う。二人の家に行き、なかなかじゃん、そう言った。 天人として、不出来な性質の二人でしたと、聖から法要がなされた一夜があった。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

閣仁の園

総文字数/2,611

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る
ラファエロ・テンシ

総文字数/3,920

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る
にちにち

総文字数/967

恋愛(純愛)2ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop