ごきげんよう、愛しき共犯者さま
「何もしてないよ」
「……」
「ちょっとひとりになりたくてここに隠れてたら蒼汰先輩が来たの」
「……」
「先輩がゲーム始めたあたりで急に眠くなって、気付いたら、今」
「……もう放課後だぞ」
「……」
「……」
「……ごめん。でもさ、心配してくれてるんだろうけど、ちょっと過保護だよ、お兄ちゃん」
私が話している間、無言で、ただ見下ろす兄。
ちょっと怖いなぁ、なんて思っていれば、兄はその場にしゃがみ込んだ。
「……だからって、ああいうのは、よせ」
「ああいうの……?」
「蒼汰に彼女いんのは知ってんだろ」
「うん」
「ふたりっきりでいるのもそうだし、肩寄せあって仲良く寝てんのも、アウトだろ。普通に」
かち合う、目線。淡々と、一定のトーンで吐き出された言葉に、確かにそうだなと納得した。
寝てしまったのも、肩を寄せあう形になってしまったのも不可抗力だけど、自分の彼氏が他の女とそういうことをしてたなんて私なら嫌だ。まぁ私の場合は、彼氏とかじゃなくて、兄、なんだけれども。
「そう、だね、気を付けます」
「ん」
くしゃり、頭を撫でられて。
ぐにゅりと胃袋が動いた感触と、腹の底から何かが這い上がってくるような気持ち悪さが同時に私を襲った。