ごきげんよう、愛しき共犯者さま
負けてない! 立候補したの!
ムキになって言い返して、ガシャコンガシャコンと無心でジュース類を七人分購入し、「じゃあね!」と兄の苦手なココアを押し付けて足早にその場を去った。
兄は嫌いなものや苦手なものでもきちんといただく性分だから、甘い甘いと言いながらもあのココアを飲み干すことだろう。ざまぁ。
ほくそ笑み、教室へ向かう廊下を歩く。
ざまぁ。ほんと、ざまぁ、だわ。
思って、脳内で吐き捨てた。
「…………いいな、」
瞬間、ぽつり、こぼれたノイズ。好きです、って、言っていた、声しか知らない女の子に抱いてしまった羨望。
叶わない想い。だから花を吐いている。そのことばかりに気を取られていたけれど、そうか、私は、己の気持ちを伝えることさえ許されていなかったんだ。
今さらなそれに気付いて、腹の底がうごめく。告白なんて、私は誰にもしたことがないけれど、相当に勇気が必要だろう。だけど、どれほどの勇気が私にあろうと、そもそも許されていない私は、ただただ、花を吐くしかない。
「…………て、がみ、」
ダメなんだ。
そう思ったら、したくなるのはもはや人の性だろう。悪足掻きでもいい。音にはできなくても、気持ちを文字にして伝えたくなった。
好きです。その、たった四文字でいい。筆跡は友人のものを真似ればバレないだろうから、隙を見て兄の通学バックに忍ばせればもう完璧だ。
「……真っ白なのに、しよう」
己が現在持っているレターセットを何種類か思い浮かべ、万が一を考慮し、柄のあるものは却下した。