ごきげんよう、愛しき共犯者さま
ごきげんよう、愛しき共犯者さま
花を吐こうが、何だろうが、時間はすすむ。
「ねぇねぇ、あれって月島先輩と千景のお兄ちゃんじゃない?」
文化祭、最終日。すべきことをし終えた放課後。普段は、兄と一緒に帰路につくのだけれど、今日は文化祭お疲れさまでしたということで、友人数人とファミレスに来ていた。
兄も友人とそうすると言っていたし、気兼ねなく食事ができることに安堵を覚えながら、迷惑にならない程度に「このあとどうする?」「カラオケでしょ」「それな」とお喋りをしていたら、トイレから帰ってきた友人が私の肩をゆさゆさと揺らした。
「え、嘘。千景のお兄さん?」
「望月先輩! カッコいいよねぇ~」
「てか待って、何で月島先輩といるの? あの人、今は海鋒先輩と付き合ってんでしょ?」
興味津々。それがぴったりな様子で友人達は「あれ」と指差された方を見ながら、口々に話し始めた。
「乗り換えたのかな? 海鋒先輩の前は確か樋爪先輩と付き合ってたよね?」
「乗り換えんの早くね」
「早すぎ」
きゃははっと笑う友人達の声を聞きながら、視線の先にいる件のふたりを見つめる。
ドリンクを注ぎながら、何か、話でもしているのだろう。月島先輩が兄を見ながら何かを言って、それに対して兄も月島先輩の方を向く。
「……っ」
そして、一言、何かを言ったかと思えば、ふわりと微笑んだ。