ごきげんよう、愛しき共犯者さま

 この病気になってからずっとまとわりつかれている私でも見たことのない、ただただ愛おしいという気持ちが前面に溢れ出ている、そんな微笑みだった。

「う、わ……見た? 今の先輩の笑顔!」
「見た……超見た! やっばい」
「ありゃ確実に惚れてんね」

 あ、やばい。

「ちょ、千景?」
「え、どしたの?」
「ちょっと大丈夫?」

 胃袋の捩れた感覚と、喉が蠢いた感覚。咄嗟に、口を手で押さえたけれど、どうにも堪えきれそうにない。

「千景? 平気?」
「千景、吐きそうなの?」
「ねぇ、もう出よっか、千景が、」

 口を開けば、花が出る。
 その確証がある以上、何も言えず、ふるふると首をふって、立ち上がった。

「千景!?」

 隣に座っていた友人の声が、響く。けれどそれに構う余裕なんてなくて、私は一目散にファミレスの出入り口を目指した。
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