ごきげんよう、愛しき共犯者さま

 突き刺さった、幾多の視線。置き去りにした通学バック。スカートのポケットに入っている携帯が震えているような気がするけれど、やはり構う余裕なんてなくて、ただただ、走り続けた。

「っ、ぅえ、」

 どれくらい走ったのか。よく分からない脇道に入って、全く知らない住宅街の隅にある、滑り台しか置かれていない無人の公園にたどり着いた。
 広くもなく、視界を遮るものもないその公園の、隅で、(うずくま)り、花を吐く。白、赤、黄、紫、薄青、黒。ぼたり、べちゃり。次から次へと、地面に落ちていく色とりどりの花。
 ああ、拾わなきゃ。
 そう、拾わなきゃ、いけない。だけど、身体は全く動かなくて、吐き散らかした花の上にぼたぼたと目玉からこぼれた粒状の水が落ちて、ぶつかって、弾ける。

「……っ、ひ、ぅ、」

 どうして。
 何で。
 己の中にあるこの薄汚い感情に気付いてから、その言葉を繰り返さないときなんて、なかった。自問して、そして、自答した。彼は兄で、私は妹だからだ、と。私達は、血の繋がった兄妹で、家族だからだ、と。

「千景っ!」

 ああもう、消えたい。
 自暴自棄な言葉を脳内に垂らす。それとほぼ同時に、背後で聞き覚えのある声が私を呼んだ。

「おい、どうし……っ、」

 じゃり、ざく。公園内を歩く音。
 それは真後ろまで近付いて、続けて言葉を吐き出したけれど、途中で言葉を詰まらせた。
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