ごきげんよう、愛しき共犯者さま
「っ、何、それ……触ったらダメってお母さんから聞いてたんでしょ? なのに触ったの、お兄ちゃんじゃん。何で、私のせ」
「触ったから吐いたわけじゃねぇ」
「……は? 何いっ」
「俺は、二年前から吐いてんだよ……花」
「……」
「お前の、せいでな」
いつかのときのような、凪いだ声。そらされない、視線。私よりもずっと前から花を吐いていた、兄。
それを彼は、私のせいだと言った。花を吐く原因は、私、だと。
「っ、う、」
いくつも情報が処理されて、低スペック脳ながらになんとか理解した。瞬間、とてつもない吐き気に見舞われ、堪えきれず吐き出した、一輪の花。
「…………は?」
涎にまみれた手のひらの上に鎮座する、白銀の百合。とある条件下でのみ吐き出すことが許されているそれが、今、己の手のひらの中にある。
「お前、それ……っ、ぅ」
その意味を、私がそれを吐き出した意味を、私のせいで二年も花を吐いている兄は、当然、知っているのだろう。
「……嘘……でしょ、」
同じように、兄は自身の手のひらへと白銀を吐き出した。