ごきげんよう、愛しき共犯者さま

「っいや! いやよ! どうしてっ! 何でっ!」

 初めて見る、と言っても過言ではないほどの動揺を見せた妻は、さながらドラマのワンシーンのように、娘、千景(ちかげ)が横たわる台にすがり付き、泣き叫ぶ。

「誠に、残念です。このようなときにお伝えするのは、心苦しいのですが、」

 立ち会いをしていた中年の警察官は、視線を伏せ、続きを言い淀む。
 まだ、何かあるのか。
 言葉にはできなかったそれを、私の視線で感じ取ったのか、もごり、僅かに口を動かしたあと、警察官は音を吐き出した。

「ご息女さまは、妊娠、していたようです」

 狭く、重苦しい空気が漂う安置室。
 止まない妻の慟哭(どうこく)の中、警察官の放った言葉は鼓膜を激しく揺さぶった。
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