ごきげんよう、愛しき共犯者さま
「……では、こちらが、ご子息さま達が遺された、遺書になります」
ゆっくりと、視線の先にある帽子が下がってゆく。
遺書。
その言葉に、どくりと心臓がはねる。
休日の昼下がり、リビングでのんびりと過ごしていたときに寄越された、一本の電話。対応したのが私で良かったと、未だ泣き叫んでいる妻を見て、思う。
そんな、まさか。人違いかもしれない。
思ったよりも冷静でいられたのは、そんな愚かな希望を抱いていたからかもしれない。けれどもそれは、残酷なほど粉々に打ち砕かれた。
並べられた、生気のない、息子と娘。そして、隠れたままの、孫。
「……やはり、自殺、なんですね、」
「司法解剖の結果、そう、診断されました」
「……っ、すみ、ません、」
差し出された、白く細長い封筒。
それを受け取るために伸ばした己の手が、ひどく震えていることに気付く。
「いえ、」
もう片方の手で手首を押さえながら、何とかそれを受け取って、深々と頭を下げる。
「……千尋、」
「っう、あ、あなた、ち、千景がっ! たっ、伎が!」
哀しみに暮れる妻の名を呼び、そっとその肩に触れれば、妻は私の方へ視線を向け、私の上服を掴んだ。
「うん……っ、う、ん、」
震えの止まぬ手で妻を抱きしめれば、何故だか、こぼした相槌までもが震えていた。