ごきげんよう、愛しき共犯者さま
さて、どうしたものか。
考えても答えは出てこない。というより、考えごとができる時間が少ない。あと、花を気兼ねなく吐ける時間も少ない。
「あれ? 千景ちゃん?」
「あ、蒼汰先輩。こんにちは」
「おー。こんにちは。何、伎いねぇの? 珍し」
結局、肉まんを半分食べさせられた翌日の昼休み。立ち入り禁止の屋上。これまでと違って、時間が許す限り私にまとわりつき始めた兄から逃げたその場所でひなたぼっこをしていたら、バレたら没収されてしまうであろう携帯ゲーム機片手に「あいつここ最近千景ちゃんにベッタリだよな」とけらけら笑いながら、私の体面を保つための嘘に利用された可哀想な先輩が近付いてきた。
私に、べったり。やはり第三者の目から見てもそう見えているらしい。
「……あー……実は、好きな人がいるって知られちゃったんですよね」
よいしょっ、と。
さも当然のように、私の隣に腰を降ろした件の先輩は、「え」と短い音を吐き出したあと、電源をオンにしようとしていた動きを止めて勢いよく私を見た。
「ちょ、ま、千景ちゃん、好きな奴いんの? 誰?」
「それは秘密です」
「マジかぁ」
「てか、先輩、今さらですけど何でここに? 屋上は立ち入り禁止らしいですよ」
「きみも同罪でしょーよ」
けらりとまた笑って、先輩はようやく電源をオンにした。微量のBGMを垂れ流しながら、ピコピコと先輩はそれに集中し始める。ちらりとその画面を見て、グラフィックがきれいだな、という感想を抱いたところで、とろりとふやける思考。
満たされた腹に、ぽかぽかの陽気。しまった、失敗したなぁ、と思った時にはもう、九割方まぶたは降りてきていた。