花吐き病──片想いを拗らせると口から花を吐き出すようになる病気。吐き出された花に他者が接触すると感染してしまう。
高校一年生の千景は、花吐き病を患った。片想いの相手は、兄である伎。兄妹だからと気持ちを隠す千景に、それまで彼女に無関心だったはずの伎は優しく接するようになった。
「……吐く花にもちゃんと意味があるんだよ」
吐く花は、吐いた者の感情そのもの。花として感情を吐いても、内側にあるそれがなくなるわけではなかった。いくら花を吐いても好きという想いまでは吐けず、ましてや本人に伝えることもできず、それは千景の中に溜まっていく。
自分には向けられない、愛おしそうな伎の微笑み。それを見た千景は、耐え切れずに様々な色の花を吐き、涙を流した。そこへ現れた伎が、千景が吐き出した花に、触れる──
「……俺と、一緒に、地獄に堕ちてくれ」
この物語は、ハッピーエンドか。はたまた、バッドエンドか。