Livre magic〜魔法使いの告白〜

『幸せになれると思うなよ！』

オズワルドさんの言葉が頭に何度も響き、僕はおぼつかない足取りで歩き、塀にもたれかかった。その体は徐々に力を失い、僕は地面に座り込む。

みんなの前から逃げ出した時、まるであの時みたいだと思った。信じていた人たちが手のひらを返し、僕を責め始めた前世は太宰修也（ださいしゅうや）だった頃のことが……。

「この本、修也だった頃にそういえば書いたな……」

どうして今まで忘れていたんだろう？きっと、暗い前世と決別したと思い込んでいたから、記憶の片隅に置かれていたのかもしれない。

この物語は、修也が小説家になり始めたばかりの頃、自分自身のために書いた修也しかわからない物語だ。僕を好きだと言ってくれる人のため、その人たちが喜ぶ作品を書けるように、修也の胸にあった暗いもの全てを吐き出してパソコンにひっそりと保存してあったものだ。

「もう忘れたいのに……！」

異世界に転生した時に、太宰修也のことは全て忘れてしまったらよかったんだ。そうすれば、こんな暗い前世をエリカたちに知られずに済んだ。普通にあの森で暮らしていたのかもしれないのに……。