泣き顔フライデーナイト


彼氏が欲しい、誰かに特別だと思われたい。
そういう想いは変わらずあるのに。


着いた物理室の扉を開いて中に入る。



「うーん」と何かを考えている亜子。

それからしばらくして私の方を見た。




「憂、それってさぁ、心の中で誰かと比べてるからじゃない?」



私の隣の席に座って、亜子はキラキラと顔を輝かせてそう聞いてくる。



「その人のことを"いいなぁ"って思ってるから、ときめかないんじゃない?」

「なにそれ?そんなことあるわけ──」




『アンタ、可愛いね』




瞬間、体中の熱が顔に集まるのを感じた。


桂木の笑った顔と、柔軟剤の匂い。

あの時のことが頭の中でフラッシュバックする。

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