泣き顔フライデーナイト


『あ』



驚いたのは、通学途中でその子を偶然見かけたことだった。

クラスの友達と駅前で待ち合わせしていた時に、
駅に入っていくその子を見かけた。



胸元まで伸びた髪

華奢な体


スマホを耳に当てて誰かと電話していたその女子は、笑っていた。



なんだ、笑った方がもっといいじゃん

とか、そんなことを思った記憶がある。



その子の笑顔を見たのはそれきりだった。



次も、その次の金曜日も、その女子はまたお菓子を買いに来た。


涙ぐんで、目と鼻を赤くして。



『(恋人と別れたとかじゃなさそーだけど……)』



ということは、この子は毎週誰かに告白して振られて、ここでお菓子を買いに来ている……ってこと?

そう考えた時に、思わず笑ってしまった。

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