捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「大村専務とは別れたんだろうな」
「ねえ、それずっと言ってるけどどういう意味?」
「そのままの意味だよ。お前の今の相手はあの人なんだろ?」
そこまで言われ、私はアイロンの電源を切ると、立ち上がり祥吾さんの前へと立ちはだかる。
「ねえ、また叩かれたいの? 私をどこまで侮辱しれば気がすむの? 私はこれまであなた以外の愛人になったことはないわよ」
私はそれだけを言い放つと、リビングから飛び出て二階で眠る瑠偉を抱き上げる。
そして、自分の部屋へと運ぶと瑠偉をベッドに寝かせた。
自分で使った“愛人”という言葉に傷ついていた自分を嘲笑ったつもりだったが、それに反して涙が零れ落ちた。
「ごめんね。まだまだ瑠偉のためにでも、パパと仲良くなりきれないよ」
昔のことも、もはや何だったのかわからないし、私の好きになった祥吾さんはもう今はいない。
優しくて、居心地がよくて、二人でただ一緒にいるだけで幸せだったあの時間は夢だったのかも知れない。
かけ違ったボタンはもうもどらないのだろうか。瑠偉を抱きしめながら無言で涙を流していると、いつの間にかそのまま眠っていたようだった。