捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「あら、おかえり」
それにいつもの明るいお母さんにも毒気が抜けてしまい、私は小さく「ただいま」と答えた。
その瞬間、祥吾さんとも視線が交わる。再会してから初めてかもしれない。完全に怒りのない昔一緒にいたときの瞳がそこにあり、私は完全に困惑してしまう。

「紗耶香、おかえり」
柔らかな嫌味ではないその声に、私はただ何も言えず祥吾さんを見つめてしまった。そんな空間を壊すように、廊下からバタバタと聞こえる足音と、「キャー」と楽しそうな瑠偉の声が聞こえる。

「あっ、ママ、パパもいる」

「こら、瑠偉きちんと服をきなさい!」
後ろからパジャマを持って走って来るお父さんに、私も慌てて笑顔を作る。

「こーら。瑠偉。きちんと着なきゃだめでしょ」
両手を広げて、走りまわる瑠偉を追いかけていると、瑠偉は祥吾さんの後ろへと隠れようとする。それを祥吾さんはあっさりと抱き上げると、瑠偉に言葉を掛ける。
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