捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

全力で奪いたい Side 祥吾

昨日久しぶりに紗耶香の気配を感じたせいか、あまり眠れなかった俺はあくびを噛み殺すと時計に視線を向ける。


定時をすぎていて、俺は小さくため息を付いた。
そんなときいきなりドアがあいて、龍が俺の元にやってきてジッと顔を見つめる。

「このあいだより調子はよさそうだな」

目の前で特に感情もなさそうに見える表情のまま、龍は俺に言葉を投げる。
こんなにクールそうに見え、いろいろ周りのことを見ている龍に苦笑しつつ口を開く。

「まあな、まだ先は長いけど」

「誤解は解けたのか？」

「彼女がどう思っているかはわからないけどな。とりあえず話をするだけはした」

好きでもない男の子供を妊娠し、その男に捨てられ、一人で産み育てさせてきて、いきなり親権を立てに結婚をせまるような男、普通に考えたらあり得ないだろう。

それでも大切な瑠偉の為に歩み寄ってくれようとする紗耶香を、幸せにしなければ俺は償えない。

「うまくいくといいな」

それだけを言うと、龍は俺にパソコンの画面を見せるといきなり本題に入った。