捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「私達先に食べちゃった。ごめんね」

むしろ自分の夕食があることに驚いていた俺は、紗耶香の謝罪の意味が全く分からなかった。

「いや、俺が遅かったんだから先に食べて当然だよ。むしろ用意してくれてありがとう」
素直に伝えれば、紗耶香は少し照れたような表情を浮かべながら白米をテーブルに置く。

「だって、食べてないでしょ? いらない日は教えて」

そんな自分を隠すように顔を背ける紗耶香も可愛すぎる。今すぐに抱きしめたいのを何とか我慢をして口を開く。

「わかった。これからはいらない日はきちんと伝える。俺の家は父親の飯はないのが当たり前だったから、こういうあったかい家庭に憧れていた」
その言葉に紗耶香は少し考える表情の後、俺の顔を見た。
「祥吾さんのご実家みたいに裕福な家庭は、なんでもあると思っていたけどそうじゃないこともあるのね」

その言葉に俺は小さく息を吐いた。
< 181 / 251 >

この作品をシェア

pagetop