捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
週が明けて俺はいつも通り会社にいたが、これからの事を考えると苛立ちにも似た感情が広がっていた。
「和泉さん、今日の終業後申し訳ないね」
そんな気持ちを隠すように言った俺の言葉に和泉さんは何も言わなかった。
「今日は龍との時間がとか言わないんだ」
クスリと笑った俺に、和泉さんはじろりと睨みつける。
「私がそんな冷徹な女だと?」
「そんなことは言ってない」
その本当に怒りを含んだ表情に、俺は慌てて首をすくめて訂正する。
「じゃあ、そういうことを言わないでください。私だって怒ってるんです」
感情をあらわにしてくれた彼女に、俺はありがたい気持ちでいた。
仕事が終わり、カチカチと時計の音だけがする社長室に俺は一人でいた。
指定した時間ぴったりに控えめなノックの音が聞こえ、俺は「はい」と返事をする。