捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「座って」
応接室のソファを案内すれば、結城はゆっくりとそちらへと向かう。

「ありがとうございます」
あえて結城の隣に座り、俺は結城に微笑みかける。

「社長……」
やたら甘ったるい声に虫唾が走りそうになるも、俺はなんとかそれに耐えつつ、ふと思い出したように装い、核心に迫る言葉を発した。

「そう言えば、最近仕事で立花さんに会った。彼女も君が教育してくれていたよな」

「ああ、はい。優秀な人材だったのに残念です。あんなことをするなんて」
心底残念そうに見えるその表情に、女は怖いと思ってしまう。

「昔の秘書と仕事はしづらくて困るよ」
そんなこと全く思っていないが、表情を曇らせため息を付けば結城は俺の顔を見上げた。
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