捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「そうですよね。彼女、地位がある人が好きなので……あっ。私ったら」
いかにも言ってはいけなかったことを言ってしまったふりをする結城に、もはや感心さえ覚えるが、まだ明確な自白は聞けていない。

「そうなの?」

「はい。昔から注意はしているのですが、どうも男性関係だけは私ではどうにもならなくて」
「そうか。だから今も」
そう言うと、結城は少しだけピクっと肩を揺らした。

「また社長に彼女は何かを?」
探るような瞳で俺をみる結城に揺さぶりをかける。

「ああ、再会してちょっとね。でもそんな女ならやっぱりダメだな。それなら君の方が」

「そうですよ。あんな愛人に情報を流して社長を貶めるような子はダメです。今も専務の愛人をしているってこの間言ってました」

「へえ」
完全に俺のトーンはこれでもかというほど下がったと思う。演技ではなくただ、嘘だと分かっているのに、紗耶香が他の男の愛人など、考えただけで嫉妬でどうにかなりそうだ。
< 232 / 251 >

この作品をシェア

pagetop