捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「社長、今日は誘っていただいて……」
とうとう手を伸ばしてきた彼女の手を、俺はこれでもかという冷たい視線で振り払う。
「え? 社長?」
意味がわからないと言った彼女に、俺は立ち上がり蔑むように見下ろす。
「知らなかったのか? あの件は彼女が犯人ではなく、副社長が自分だと認めたぞ」
その言葉に結城は驚いたように、表情をこわばらせた。
「嘘!」
「それに立花が愛人をしていると本人が言ったんだよな」
「それは……」
しどろもどろに答える結城に、俺は畳みかけるように言葉を投げつけようとしたところで、社長室の扉があいた。
「結城さん……どうして」
そこには悲しさと、怒りを湛えた紗耶香が立っていた。
「紗耶香!」
驚いたように言葉を発すると、結城はすべてを悟ったのがズルズルと座り込んだ。