捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「嵌めましたね。社長」

静かに嘲笑うように言った結城に俺は「お互い様だろ」とあざ笑うような視線を向ける。

本当ならば、女でなければ今すぐここで叩きのめしたい気持ちだ。
それに、こんなことは紗耶香のいないところでやりたかったが、どうしても紗耶香が一緒に行くと聞かなかった。
今までもたくさん苦労してきたのに、また傷つくようなことをさせたくなかったのに。

「どうしてこんなことを」
静かに呟いた紗耶香に、結城は初めて今までの表情を崩し悲し気な笑みを浮かべた。

「知ってました?」
チラリと俺を見たその表情は、もはやいつもの自信が溢れている結城ではなく、今にも泣きそうな顔だった。

「何をだ」
静かに答えれば彼女はキュッと唇をかみしめた。
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