捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
家に帰り紗耶香の手を引いてリビングのソファに座らせれば、紗耶香の瞳からボロボロと涙が零れ落ちる。
今まで我慢をしていたようで嗚咽が漏れる。それを包み込むように俺は紗耶香をギュッと抱きしめた。
ひたすら泣き続ける紗耶香の背中を撫でながら、紗耶香が落ち着くのを待った。
「ごめんなさい。シャツが……」
どれぐらいそうしていたのだろう。ようやく泣き止んだ紗耶香が俺のシャツを見て口を開く。
「いいよ。これぐらい」
仕事用にまとめていた紗耶香の髪を俺が解くと、紗耶香は大きく息を吐いた。
「なんかね、もうよくわからないの」
「うん」
当たり前だろう。もしかしたらと気づいてからの紗耶香は、明らかに落ち込んでいたし、悩んでいるようだった。
それが、今日はっきりとしてしまったのだ。それも自分たちの仲を壊すためだったとは。
あんなに信頼しきっていた結城の裏切りに、傷つかないわけがない。
「五年前のこと、許せるわけはないの。でも人を好きになるって何をするかわからないのもわかるの。でも、そのせいで私達は……」
そう言いながら紗耶香の瞳からまた涙が零れ落ちる。