捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

瑠偉を産んだときは、もうこんなドレスを着ることなどないと思っていた。
母親一人でも絶対に瑠偉をしっかり育てるんだ。それだけを考え、意地を張って、自分を強く見せて偽ってきた。

「紗耶香」
柔らかな大好きな声が聞こえて、私は後ろを振り返った。

ダークグレーのタキシードが、ブラウンの髪と綺麗な瞳によく似あっていた。

「素敵」
つい声を掛けると、祥吾さんは苦笑する。

「俺の言葉を先に言うなよ」

「だって、本当にそう思ったの」
笑っていた私だったが、目の前に綺麗な瞳がありドキッとする。
今日の祥吾さんはいつもより素敵すぎて、心臓が煩い。

「本当にきれいだよ、奥様」

″奥様“その言葉が少しだけくすぐったい。
触れるだけのキスをしたところで、「時間です」ドアの外から聞こえた声に、私たちは微笑みあう。

「さあ、瑠偉が待ってる」
祥吾さんの言葉に、私は大切な瑠偉の笑顔を思い浮かべて祥吾さんの手を取った。

これからもたくさん大変なこともあるだろう。それでも私たちは一緒に歩いて行く。
私らしく、自然でいさせてくれる、この愛する人の横で。

END

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