捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
元凶である専務の声が後ろから聞こえ、私はその声のほうを振り返った。
「お戻りでしたか」
小さく息を吐くと、私は笑顔を向けることなくまた専務室へと歩き出した。
「何か機嫌悪いな」
結婚が決まり人が変わったように柔らかくなった専務にかまうことなく私は歩みを進める。
元々は笑顔など見せることなく、ワイルドできつい印象しかなかった専務だが、こじらせにこじらせていた初恋が実った今、その面影はどこかへ飛んで行ってしまった。
「仕事なのでそのにやけた顔どうにかして下さい」
「相変わらずだな」
この恋を実らすために助言をして以来、いつのまにかこう軽口を叩ける関係になってしまったのは予想外だったが、仕事は前より円滑に回っているし、奥様とも仲良くさせてもらっている。