捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「ああ、専務ちょうどいいところに。東和社長が大阪の大規模商業施設の件で挨拶に見えていたんだよ」
五十代半ば人の良さそうな高村副社長の声に、専務も仕事用の笑みを浮かべると、部屋へと入らず副社長たちのもとへと歩いていく。

「東和祥吾です。お会いできて幸栄です」
にこやかに挨拶をされ、専務もそれに応じるように名刺を取り出す。
「こちらこそ大村蓮人です」
専務とはまた違ったタイプだが、どちらも目を引くだろう二人の横で、私はただ早く終わらないかと俯いていた。

「こちらは?」
さわやかと言えば聞こえがいいがどうしても軽薄そうに聞こえてしまうその声に、私は仕方なく顔を上げた。

「大村の秘書をさせていただいている立花です」
そんな私に、東和社長は特に表情を変えることなく、副社長をまっすぐ見つめた。

「副社長、今回のプロジェクト大村専務にお願いすることは可能ですか?」
そのセリフに何を言い出すのだろうと、私は顔面蒼白になるのがわかった。
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