捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
会社を辞めたことですべての気持ちが切れたのかもしれない。ずっと泣かないと思っていたのに、懐かしい自分の部屋に入ったとたん涙が零れ落ちる。
ただの身体だけの関係ならばもう少し平気だったのだろうか。祥吾さんの優しさも、意外に甘えたなところも、癖も仕草も知ってしまった。
全て自分で決めて初めて、自分で選んだ道だった。しかしこんな最後を望んだわけではないし、初めは何かの間違いで、祥吾さんの優しさを信じたいバカな自分もいた。
しかし最後までなんの連絡もなかったのが全てだとようやく悟った。
明日、スマホも解約して、会社関係の連絡は一切経つことにした。少しでも何かを残すと未練が残りそうだった。今どきシングルマザーなど珍しくない。私には頼れる両親もいる。
泣くのは今日だけだと心に誓って、そっとお腹に手を当てる。
「ママだけしかいないけど、いっぱい愛してあげるからね」
泣きながら声を掛けた後、私は涙を拭うとリビングへと向かった。