捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

専務には大丈夫とはは言ったものの、本当に東和社長と一緒に仕事が出来るのだろうか?

ビルの外に出ると、冷たい風が肌を撫でる。いつのまにかすっかり秋になっていたことに気づく。ぼんやりと空を見上げるも、真っ暗な空には星一つ見えない。
小さくため息を吐き駅へと向かおうと足を踏み出すと、急に手を引かれて私は目を見開いた。

「久しぶり、紗耶香」
その冷たい声に私はビクッと肩が揺れ、その声の主を見ることができない。
「今の男はあの専務か?」
その嘲笑ったような言い方に私は急激に心が冷えていく。自分で蒔いた種だったが、この人は私をそういう女とやはり思っていたのだ。

「関係ないですよね」
自分でも思った以上に低い声が出たことに驚くも、突如掴まれていた腕が引かれ、耳元でさんざん聞いた声が響く。
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