捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「ああ、私もそれを考えていたんですよ。先ほどの内容を聞いてもターゲット層も若い。専務のほうが適任でしょう」
その言葉に専務が私にちらりと視線を向けるのがわかった。
「立花、スケジュール調整してくれ」
もちろん返事をしなければいけないことはわかっているも、のどが張り付いて声が出ない。
そんな私の異変にきっと気づいたのだろう。専務は何も言うことなく東和社長を見た。
「また後日詳しいお話をしましょう」
仕事用の少し威圧的なオーラを纏った専務だったが、それに負けないのが東和社長だ。
帰って欲しい。そんな私の願いをぶち壊すように、わざとらしく後ろに控えていた女性に声を掛ける。
今までそこにその人がいることすら気づいていなかったなんて、私はどれだけ動揺をしていたのだろう。
綺麗でスタイルがよく、出るところは出ていると言えばいいのだろうか、いかにも女性的なその人が、背中までの髪を耳にかきあげながらタブレットを確認している。
ふたりでひと言ふた言話をした後、東和社長は少し申し訳なさそうな表情を浮かべて私たちを見た。