【短】You're my only shinin' star


その日は、妹からチョコレートケーキを作るから、早く帰って来いといういかにもトップダウンな物言いの約束を取り付けられ、周りのピンク色なオーラに後ろ髪を引かれる思いで、家に向かった。


そうしたら、なんでか俺の家の前で、落ち着かない様子でウロウロとしている麻沙美が、いた。


「…麻沙美?」

「あ…きみくん」


久しぶりに聞く、麻沙美の俺を呼ぶ声。
それが心にそよそよとした心地いい風になって感じるのが不思議だった。


「どうした?」

「あの、あのね?」

「ん?」

「これ…受け取ってくれると、嬉しいなって」


その言葉と同時に出された、桜色の包装用紙に真っ赤なリボンが控えめに添えてある小さな箱が、ちょこんと麻沙美の手のひらに乗っかっている。

俺は、それをニカッと笑って、右手で受け取る。


「おー…なにこれ、手作り?さんきゅーな?」

「う、うん」

「ホワイトデーには、ちゃんと、お返しするから。何か欲しいもんあったら教えてな?まぁ…そんな高ぇもんはやれねーけど」


と、笑うと、麻沙美は少しうつむき加減になってから、何か覚悟を決めたように、一呼吸置いて俺を真正面から見つめてきた。





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