きみのため
「ね、ねぇ…仕事は…?
わたしのことずっと見てたって…」
「仕事?辞めたよ。
もう必要ないものだからね」
車はどんどん森の奥へと入っていく。
どこまで行くのだろう。
もう戻れない気がした。
「真央、愛してる。真央の全部が欲しい」
「……」
「真央の全部が知りたい」
「………」
「ただ…それだけだったのに。
真央は俺の気持ちを無視したよね」
紫乃くんの瞳にはもう光なんてなかった。
知らない人みたいな、
歪んだ色をしている。