君がいなくなった後の世界で

「ねぇ、瞬」

「んっ?」

「私の人生が終わって、また瞬に逢えたなら‥‥‥!」

どうか、私の一生のお願い。

「その時は、思いっきり私を抱きしめて」

この三途の川を渡るときが来たら、『頑張ったね』と強く抱きしめて欲しい。

そんな切実な私の願いに、瞬は飛びっきりの笑顔で答えてくれた。

「もちろん! 思いっきり抱きしめてあげる。もう片時も離れたりなんかしない。ずっと、瑞希の傍にいるよ」

「約束だよ?」

「うん。約束する」

元の世界に戻ったら、しばらく瞬に会えなくなるけれど、その約束があるだけで頑張れそうな気がするよ。

「じゃあ‥‥‥またね、瞬」

笑顔で手を振る。

“さよなら”は言わない。

そんな私に気づいたのだろう。

「またね、瑞希」

そう言って、瞬は笑顔で手を振り返してくれた。

瞬に見送れながら私は、もと来た道を戻った。
< 10 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop