君がいなくなった後の世界で

* * *


ーーあの日。

学校終わって、いつものように瞬と手を繋いで他愛もない会話をしながら帰っていた。

少し先には、遮断機が降りる音。

『あっ』

瞬の動きがピタリと止まった。

1歩先を歩いてしまった私は、彼を見上げた。

『どうしたの?』

そう聞くけど、瞬はある場所を見つめたまま、私の問いに答えなかった。

『‥‥‥瞬?』

不思議に思った私は、彼が見つめている場所を見た。

そこには、踏切のところに佇んでいる子猫がいた。

危ない!

このままでは、轢かれてしまう。

『‥‥‥ごめん、瑞希』

瞬は繋いでいた私の手を離し、子猫の元へと駆け出した。

『待って、瞬! 電車、来てる!』

ーー“行かないで”

私は離れて空いた手をすぐさま伸ばしたのに、瞬には届かなかった。

ただ、走りゆく瞬の背中を見送ることしかできなかった。


* * *
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