君がいなくなった後の世界で
「だから、本当にごめんな。瑞希‥‥‥」
瞬もその時のことを悔やんでいたんだ。
「もう、いいよ。瞬は、必死にあの子猫を助けようとしたんだもん」
「あのまま見捨てることなんてできなかった。なんとしてでも助けたいと思ったんだ」
やっぱり、瞬は優しい人だ。
電車やバスに乗ったときとか、必ずと言っていいほど、お年寄りに席を譲る。
それでいて、私にも席を譲ってくれる。
そんな優しくて紳士な彼。
猫アレルギーなのに、あの日、子猫を助けるくらい。
誰に対しても、動物に対しても優しく接する人。
もし、あの時、私が伸ばした手が瞬に届いていたとしても、きっと瞬は子猫を助けただろう。
「だからって、瑞希はビルの屋上から飛び降りることはないだろう?」
‥‥‥ズキッ。
心臓が嫌な音を立てた。
「なんで死のうとした?」
自分でも無謀な行為をしたと自覚してる。
でも、瞬の死を目の当たりにして、もうこの世界に瞬がいないことを信じたくなかった。
受け入れたくなかった。
瞬がいなくなって1週間。
1人で寂しさに耐えていた。
学校に行っても、瞬の姿はどこにもない。
私の隣に、瞬はもういない。
残された私は、瞬がいない世界で生きていける自信がなかった。
だから私は、ビルの屋上から飛び降りた。
瞬に会いたかったから。
私が死んだら、瞬に会えると思ったから。